無意識とは②発熱 -基礎的知識・感染-

2019年01月24日

発熱 -基礎的知識-

はじめに

 当院の入院患者の多くは脳血管疾患,術後廃用症候群などを有し,基礎疾患や合併症を呈することも多い.また免疫力の低下や感染症等のリスクが高く,熱発を生じやすい状態にある.今回は,体温の調節機構と発熱におけるさまざまな原因・メカニズムについての論文から,臨床に少しでも活かせるであろうものをまとめ,報告する.

 

 

Ⅰ.体温調節の中枢神経機構

[ 蒸散性・非蒸散性熱放散 ]

  暑熱環境で体温上昇を防ぐ対処反応には蒸散性熱放散と非蒸散性熱放散がある.暑熱 に曝露されたときにまず起こるのは,皮膚血管拡張などの非蒸散性熱放散反応である.皮膚血管は主に交感神経支配を受けており,交感神経活動が低下することで血管が拡張し,皮膚血流が増加することで体表面からの熱放散が促進される.さらに強度の暑熱環境では,非蒸散性熱放散に加え,蒸散性熱反応として発汗が起こる.(1)

 

[ 熱産生 ]

  寒冷曝露時には,まず皮膚血管を支配する交感神経活動が高まり,血管が収縮する.それにより皮膚血流が減少し,体表面からの熱放散を抑制する.それでも体温の低下が避けられないほどの寒冷環境では積極的な熱生産が起こる.まず,褐色脂肪組織などで非ふるえ(代謝性)熱生産が起こる.さらに強度の寒冷環境では,体制運動神経を介した骨格筋のふるえが惹起される.(1)

 

・褐色脂肪組織:

新生児に多いが,最近成人でも鎖骨上部や脊椎傍部に存在し,寒冷刺激に応じた熱産生やエネルギー消費を介した肥満抑制に機能することが報告されている.




Ⅱ.フィードフォワードとフィードバック

  脳内で体温調節中枢として機能するのは,視床下部最吻側に位置する視索前野である.視索前野に皮膚の温度受容器で感知した環境温度変化の情報が入力される.(2)また,深部体温の変化は主に,視索前野ならびに前視床下部に分布する温度感受性ニューロンが脳温の変化として感知する.

  感染時には発熱メディエーターとしてプロスタグランジンE2(PGE2)

が産生され,視索前野に作用することで発熱が起こる.


  この体温調節システムにおいて,環境温度が変動したときに,それを皮膚で感知して視索前野へいち早く伝え,体温に影響が出る前に適切な体温調節反応を惹起させる仕組みをフィードフォワード機構という.(2)

  過酷な温度環境や強度な運動などで深部体温が著しく上昇する場合,深部体温の変化を視索前野の温度感受性ニューロンなどが感知し,深部体温を至適域へ戻すための体温調節反応を惹起する.この仕組みを(負の)フィードバック機構と呼び,ループ状の制御系となる.




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ohmygodtogether at 01:31│Comments(0)循環・呼吸器 | 脳・神経

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