2019年03月07日
どうする?✋整形外科 【尺骨茎状突起単独骨折 症例検討】
どうする?✋整形外科 【尺骨茎状突起単独骨折 症例検討】
症例 23歳,女性 右利き 塾講師
H28.4
雨の中を自転車相走行中に転倒し受傷.顔面擦過傷,歯牙欠損,左手関節痛,右膝痛あり.
救急にて当院整形外科受診し,左尺骨茎状突起骨折の診断.徒手整復後にギプス固定.
H28.5 PO3W
ギプスカットし,シーネ固定.疼痛はないが,回内運動時に「ピキッと鳴る」
DRUJ1.04mmの開大
H28.5 PO4W
シーネオフ,リハ処方
リハビリ評価:回内-20°,回外80°,掌屈45°,背屈60°
回内運動時にDRUJ背側に疼痛の訴え
DRUJ0.7mmの不安定性,骨折部はcallus formation
H28.5 PO5W
リハビリ評価:回内-5°,掌屈60°,背屈70°
圧痛:尺骨茎状突起上 (TFCCに圧痛は認めない)
回内外運動時にDRUJ背側に疼痛の訴えあり,尺骨頭を掌側に圧迫しながらの運動で疼痛の軽減を認める.
運動時に尺骨の脱臼や異常可動性は認めていない.
H28.6 PO9W
リハビリ評価:回内55° Active-Assistiveで75°まで疼痛なく可能.
DRUJは健側と比較して若干の動揺を認めるが,著明な異常可動性・脱臼はみられない.
ADLにおいては,パソコン操作は回内で可能となった.しかし,ブラジャー装着などの結滞動作がやりにくい.背屈位での作業で時折疼痛がある.急に動かしたときに軽い痛みがある.との訴えがあった.
考察
本症例の骨折は内田らの分類によれば基部骨折,中村らの分類によれば基部水平骨折であると思われる.転位はごくわずかであり,保存療法として約3週間のギプス固定,1週間のシーネ固定がなされた.当初は回内運動においてDRUJに疼痛の訴えがあり,また現在でもわずかな不安定性が認められる.TFCC上の圧痛やストレステストでも陰性であり,TFCC損傷はないものと考えられる.
DRUJの不安定性と尺骨茎状突起基部骨折との関連は大きいとされており,本症例においてもその影響により,疼痛を伴う回内制限とDRUJの不安定性を示したと考えられる.経過とともに疼痛および回内制限は改善されているが,DRUJのわずかな不安定性は,掌背側への主要な安定要素である橈尺靭帯が何らかの影響を与えている可能性が考えられる.
LoganらはDRUJが不安定な場合,橈尺靭帯または尺骨茎状突起のいずれかを修復する必要があると述べている.本症例において,骨折部の仮骨形成が得られており,またADL上結滞動作のやりづらさや,軽度の疼痛はあるが,仕事の作業やパソコン操作も可能となってきている.また経時的に可動域の改善や疼痛の軽減が認められている.
これらのことから,経過を長期的に観察し,DRUJの疼痛および可動域制限が残存する場合に,骨接合術または軟部組織修復を検討する必要があると考えられる.